岩井俊二監督『リリィ・シュシュのすべて』のあらすじ、解説と考察 リアルな陰鬱さが生々しく描写されていく、澱みと映像美の世界

『リリィ・シュシュのすべて』は、2001年に公開された、日本の映画です。

監督 岩井俊二

出演 市原隼人、蒼井優、伊藤歩ほか

田園が美しいある地方都市。中学二年の蓮見雄一(市原隼人)は、かつての親友、星野(忍成修吾)にいじめられ、

窒息しそうな毎日を送る。

唯一の救いは、カリスマ的歌姫、リリィ・シュシュの歌声だけだった。

どこまでも広がる美しい田園と青空、そして登場人物たちが抱える心の闇は、強烈なコントラストとなって描かれます。

目次

岩井俊二監督のユニークな世界観

岩井監督の作品は、美しい映像美で知られています。

自然光の使い方や、風景描写に対するこだわりがあり、非常に詩的で夢幻的な雰囲気を作り出します。

また、岩井監督は音楽も巧妙に使います。

彼の作品では、映像と音楽が一体となって観客に深い印象を与える作品が多いです。

そして、現実と幻想が交錯するような要素が含まれることが多く、

夢や記憶、時間の流れといったテーマが繰り返し登場します。

これにより、作品全体に独特の雰囲気が漂うのです。

いざ、鑑賞

冒頭からリリィ・シュシュの音楽が流れていて、とにかく懐かしい。

無限に広がる田園に佇む少年(市原隼人)が、儚く美しい。

まだあどけなさの残る市原、とにかく懐かしい。

何度繰り返し観ただろう、この映画。

この映画では、書き込みサイトが頻繁に出てくる。

まさに私の中学時代も、BBS(書き込み投稿)が流行していた時代である。

映画では、逃げられない鬱屈した、窒息しそうな日常の風景に、ただただ美しいドビュッシーのピアノ曲が流れてくる。

これは、「音」の映画であり、「光と闇」の映画である。

まるでレンブラントの絵画のようである。

あれから、私はたくさんのピアニストによるドビュッシーのアラベスクを聴いた。

今一度この映画に使われているアラベスクを聴くと、比較的ゆったりした挽き方であることに気付く。

観ていると、だんだん心が痛くてエグられて、ヒリヒリしてくる。

とにかく救いのない日常と、美しい映像・音楽の交差が繰り返される映画だった。

執筆者:山本和華子

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