『枕草子(まくらのそうし)』とは、平安時代中期に成立した随筆です。
作者は清少納言です。
清少納言は、紫式部とライバル関係にあったそうです。
『枕草子』の魅力は、
1、客観的にものごとをとらえているところ
2、みずみずしく、まるで情景が浮かんでくるような言葉遣い
『枕草子』には、「をかし」や「いとをかし」という言葉が多用されます。
「をかし」とは古文では「趣がある、滑稽だ、魅力的だ」など、さまざまな意味があります。
これは、感情のままに「イイね! おもしろいね!」ではなく、客観的・理知的に「これはこういう理由で、こういう点がおもしろいね」と評価するニュアンスが含まれています。
また、声に出して本文を読むとより一層感じられることなのですが、『枕草子』の言葉遣いが、ものすごくみずみずしくて美しいのです。
そこを感じることがミソかなと思っています。
早速、『枕草子』の本文を味わってみましょう!
「うつくしきもの」の段から
うつくしきもの 瓜(うり)にかきたるちごの顔。雀の子のねず鳴きするにをどり来る。雛(ひいな)の調度(ちょうど)。
(訳)かわいらしいもの 瓜に描いた子どもの顔。スズメの子が、ネズミみたいな声で呼ぶと、おどるようにやってくるのも。お人形のお道具も。
※「うつくし」は、今の「美しい」とは違い、「かわいらしい・あいらしい」の意味です。
「説経(せきょう)の講師(こうじ)は」の段から
説経の講師は、顔よき。講師の顔をつとまもまへたるこそ、その説くことのたふとさもおぼゆれ。
(訳)お経の講義をするお坊さんは、イケメンがいい!講師の顔をじいっと見つめていればこそ、その人の話していることの尊さが感じられるわ。
※イケメンはいつの時代も正義ですね、わかります。
「春はあけぼの」の段から
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
(訳)夏は夜!月の出ているころはもちろん、闇夜でも、蛍がたくさん乱れ飛んでいるの。また、ほんの一つ二つ、ほのかに光って飛んでいくのもいい。雨が降るのもいい。
※清少納言の魅力がたっぷり詰まった一文ですね。情景が浮かんでくるようです。
「あてなるもの」の段から
あてなるもの 削り氷(ひ)に甘葛(あまずら)入れて、あたらしき鋺(かなまり)に入れたる。水晶の数珠(ずず)。いみじううつくしきちごのいちごなど食ひたる。
(訳)上品で、美しいもの けずった氷に甘葛(あまずら)をかけて、新しい金属製のおわんに入れたの。水晶の数珠。とてもかわいらしい小さな子が、イチゴなどを食べているの。
※あてなるものとは、高貴な、とか、上品な、とか言う意味です。
いかがでしたでしょうか。
清少納言の言葉は、読んでいるだけで情景が浮かんできて、まるでその場にいるような感覚になれます。本当に美しいキラキラした言葉がつづられています。
ぜひ、声に出して読んでみてください。また違った感覚を得ることが出来ますよ。
執筆者:山本和華子
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