地元の小さな書店にて、書店員さんに声をかけた。
「あの、あのなんていうタイトルだったかな、なんか、オシャレなタイトルの、江國香織の小説なんですけど、探してます」
ちゃんと調べとけよ、と思うのだが、色んな単語を覚えることが苦手な私は、結局読みたい本のタイトルを覚えることなく、レジカウンターでそう伝えた。
結局、地元の小さな書店にはその本は在庫がなく、京都市内にある丸善という大型書店にて、検索機を用いて探し出し、その本を購入した。
『シェニール織とか黄肉のメロンとか』。
表紙の、優雅な午後の有閑階級の雰囲気をまとっているようなイラストが可愛い。
オシャレだけどなんとも覚えにくいタイトルの小説を手に入れた私の足取りは軽く、まるで地上から3センチ浮いているような足取りで帰宅し、すぐさまダイアナ・クラールを流し、珈琲を淹れ、読み始めた。
江國香織は、大好きな小説家の一人である。初めて読んだのが、中学2年生のときに読んだ『すいかの匂い』。
江國香織の心揺らぐような不思議な描写が、当時の繊細な感性を優しく刺激した。
初めての体験だった。以来私は、江國香織ばかり読むような女になったのだ。
あらすじ
この作品は、学制時代に読書サークルで知り合った「三人娘」を中心に描いています。
作家の民子、自由人の理枝、主婦の早希という三人の女性が、それぞれの人生を歩んでいる中で、再び交流を深める様子を描いています。
読んだ感想
民子、理枝、早希のまったく性格の異なる女性の人物描写が、とても丁寧でリアルに描かれていて、頭にスッと入ってくる。
各章によってそれぞれ違う人物の視点から描かれているのが面白い。
江國香織の作品には、よくカッコ書きが書かれている。それも特徴の一つで、読んでいて楽しい。
私はいつも彼女の作品を読みながら、時代を感じさせないのが彼女の魅力だと思っていたけれど、今回この作品では「ラインで連絡を取る」と書かれていて、時代を感じさせるような描写で、少しだけ寂しい気持ちにもなった。
香坂さんという男性と理枝の、大人の出会いがなんだかとっても切ない。キュンキュンしてしまう。
江國香織の、何の代わり映えもしない日常を切り取って美しく、そして時には残酷に、またリアルに描写する作品が、とても好きである。
理枝の「あたしたち、誤解だらけの人生だわね」というセリフが印象的だった。
誤解を楽しみ、そしてその誤解を一つひとつ紐解いていく楽しさも描かれている。
執筆者:山本和華子
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