円空
円空とは、江戸時代の修験者・仏師です。
円空は、日本中を遊行しながら、訪れた土地で仏像を彫り続けて一生を全うしました。
円空が仏門に入った理由は、「自然」と「生活」の中で信仰を深めるためでした。
円空の仏門の道は、教義よりも生きた実践によって形作られました。
俳優の井浦新さんも、円空の仏像がすごく好きなんだそうです。
井浦新さんは日本美術や伝統工芸に造詣が深いことより、現在は京都国立博物館の文化大使に就任されています。
日本中を旅した円空でしたが、特に飛騨の地で多くの仏像を彫ったことで知られています。
飛騨の地といえば、2024年に、物理学者であり芸術家でもある落合陽一先生が、
神社を創建したことでも有名ですね。
拙著『歴史をたどる、プチ旅行』でも書きましたが、日本史において飛騨というのは、
両面宿儺の地、金森氏の地という意味において、非常に重要な地域なのです。

空也上人
最近、SNSにおいて、空也上人像の写真がミーム化してますよね!
あれは面白い動きだと思います。
空也上人は平安時代の念仏僧で、念仏を唱えながら諸国行脚の旅を続けました。
空也は各地域に住む人々に仏の教えを伝えるとともに、
公共事業(橋を架けたり井戸を掘ったり)も行いました。
なんか空海みたいですね。
空也上人の行動は、仏教の「慈悲」の精神を体現するものでした。
一遍
一遍は、鎌倉時代の僧侶です。
熊野権現への参籠(さんろう)の際、夢の中で熊野権現からの神託を受けました。
「念仏を唱え、人々と共に踊れ」
そして一遍は、「踊り念仏」を広めました。
一遍の残した和歌に、「花がいろ 月がひかりとながむれば こころはものを おもはざりけり」
というものがあります。
花には花の色が、月には月の色がある。それをそのまま眺めれば、心は余計なことを思いめぐらすことはない、という意味です。

仏教の教え「色即是空」について
仏教のお経で有名なものの一つに、「般若心経」があります。
私が夜中に金縛りにあったときにいつも心の中で唱えるやつね(笑)
般若心経は、日本国内に存在するすべての宗派で唱えられているわけではありませんが、
言葉を紐解けば興味深い内容ではあります。
「般若心経」の中に、「色即是空 空即是色」という言葉があります。
どういう意味でしょうか。
すでにたくさんの分かりやすい解説が存在していて、そしてたくさんの解釈がありますが、
その中でも私なりの解釈について、今回はお伝えしますね。
「色」とは、この世のさまざまな目に見える物や現象のことを指します。
「空」とは、別に何もないとか、真空とか、意味がないとか、そういう意味ではないです。
絶対的に未来永劫不変なものなど、ただ一つも存在しない、という意味だと私は解釈しています。
「空即是色」というのは「空=色」という図式ですが、私たちが目に見えている物や現象はすべて、
他者とのご縁や関係性によって変化する、という意味です。
有名な本で、これを「人間分子の関係、網目の法則」と表現することもありましたね。
「色即是空」というのは「色=空」という図式になります。
ちなみに私は学士で認知心理学を専攻していたのですが、この「色即是空 空即是色」という概念は非常に認知心理学と近いところがあり、私はこの意味を知ったとき、すごく腑に落ちたのを覚えています。

すべては世界に遍在している
私は、すべての物事は世界に遍在している、と考えています。
だから、この現代においてわざわざ東京の一等地のタワマンに住んで、投資で秒速で1億稼いで、美人インフルエンサーと毎晩飲み歩いてみたいなことをステータスだと思って優越感に浸るのは、まぁ、そういう価値観の人も一部にはいらっしゃるのでしょうけれど、
私からすると、「へー」としか思わん。
例えば、私の地元は北陸なんですが、本当に美味しい地酒って、東京などの都会には出荷せずに、地元の人々に愛され続けています。
その土地でしか食べることのできないお魚とか、郷土料理とかって、たくさんあると思うんですよね。
そういう意味で、私は、東京にはすべてのものが揃っているだなんて1ミリも思ってない。
さきほどの「般若心経」の教えにもありましたが、
目に見える物や現象が他者とのご縁や関係性によって変化するというのは、この「食の文化」にも繋がっています。
東京の料亭で仰々しく出される超高級生牡蠣をもったいぶって食べるのと、
広島の海辺で、その場でとれた生牡蠣にポン酢をかけて豪快にジュルジュルっと食べるのとでは、
全然違うわけですよ。
山や海などの大自然を感じながらいただくって、すごく豊かな生活だと思うんですよね。
私がたまたま知ったある旅人も、円空や空也、一遍のように世界を行脚する旅人なのですが、
その旅人も、旅先の郷土料理や、現地で採れた果実などを食べていて、
素敵な人生だなぁと、私は彼の姿をみて思うのでした。
執筆者:山本和華子

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