前回の記事では、「日本では女性の人権が守られていない」ことに焦点を当てました。
今回は、滋賀医大生による性暴力事件をもとに、日本の司法の実態について見ていこうと思います。
滋賀医大生による性暴力事件
2022年に起こった滋賀医大生による性暴力事件の被告に対し、大阪高等裁判所は無罪判決を言い渡しました。
飯島健太郎裁判長は判決理由として女性に同意があった疑いを払拭できないと判断し、暴行や脅迫に当たる行為も認められないとしました。
司法界において、なぜ女性の性被害がこのような認識をされるのでしょうか?
日本において女性の人権や性被害がなぜ法律によって守られないのかについて、さまざまな観点から見ていこうと思います。
「恥」の文化
日本では、性に関する話題が長い間「恥」と見なされ、性被害や性暴力が語られることが避けられてきました。
被害者が声を上げづらい環境が、性犯罪の隠蔽や黙認を助長しました。
また、性被害を訴えた女性が「恥をさらした」と見なされ、被害者バッシングが起こる文化が定着しました。
警察・司法の意識の低さ
性被害者が警察に相談しても、「被害者に落ち度があった」という見方をされることが多いのが実情です。
被害者は、警察や司法に対しても「二次被害」を受け、泣き寝入りするケースが後を絶ちません。
政治のジェンダーギャップ
日本の政治は、男性中心の構造が続いています。
現在、女性議員の割合は世界平均を大きく下回っています。
政治的意思決定の場に女性が少ないため、女性の権利問題が政策に反映されにくいという実情があります。
したがって女性の声が法整備に反映されず、性被害保護やジェンダー平等の実現が、世界の先進国と比較しても非常に遅れています。
性被害バッシングの文化
日本では、被害者が声を上げると非難される文化があります。
「被害にあったのは、あなたにも落ち度があるのではないか?」という考え方が根強くあります。
強姦罪から強制性交等罪、そして不同意性交等罪へ
次に、性被害にまつわる事件に対して適用される法律について見ていきます。
2017年までは、「強姦罪」(刑法177条)が存在していました。
強姦罪の被害者の性別は女性のみで、加害者の性別は男性のみでした。
行為の範囲は膣への挿入のみで、13歳未満は同意の有無を問わず罪が成立しました。
法定刑は3年以上の懲役で、親告罪(被害者が告訴しない限り起訴されない)でした。
また、暴行や脅迫がなければ罪に問えませんでした。
その後、強姦罪は強制性交等罪と変更され(2023年まで)、現在は不同意性交等罪(改正後の刑法177条)に変更されました。
不同意性交等罪は、「不同意」という言葉を明示することで、被害者の意思に反する性交等が犯罪であることを強調しています。
不同意性交等罪の被害者・加害者ともに性別は問いません。
行為の範囲は、膣・肛門・口腔への挿入で、16歳未満は同意の有無を問わず罪が成立します。
法定刑は5年以上の懲役で、非親告罪(告訴なしでも検察が起訴できる)です。
不同意性交等罪は、暴行・脅迫がなくても、同意がない場合は成立します。
被害者が抵抗したかどうかに関わらず、同意の有無が判断基準になることで、より多くの性被害が適切に裁かれるようになりました。
未だ残る疑問
不同意性交等罪では、同意の有無が判断基準になるのに、なぜ滋賀医大生による性暴力事件ではこの法律が適用されなかったのでしょうか?疑問が残ります。
X(旧twitter)ではこの事件に関して、ありとあらゆる情報が飛び交っていました。
被告側の親による多額のカネの流れにより、司法の独立性が保たれていない、というポストが目立っていました。
執筆者:山本和華子
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