インドの政治・経済・歴史をわかりやすく解説 ~インドのシリコンバレーからマルチ=スズキまで~

目次

インドの歴史

インドの古代文明に、インダス文明とガンジス文明があります。

インダス文明は紀元前2600年頃からインダス川流域で栄えた文明です。焼き煉瓦を用いて街路や用水路、浴場を整備した都市が築かれていました。しかし、紀元前2000年頃に衰退しました。

紀元前1500年頃、インド・アーリア系の諸部族がインドの地に移住してきます。

紀元前1200年頃には遊牧生活から農耕生活へと移行していきました。

この頃に古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』が編纂されます。

紀元前317年頃には、マウリヤ朝マガダ国が建国されます。第3代アショーカ王の時代に支配域を拡大し、インド初の統一王朝が誕生します。

紀元後1世紀後半、クシャーナ朝がインダス川流域に進出します。クシャーナ朝は中国とローマを結ぶ交通路の要地にあり、仏教文化とギリシャ美術が融合した「ガンダーラ美術」を成立させるなど大いに栄えましたが、3世紀にはササン朝ペルシャの遠征を受けて滅亡。

320年頃にチャンドラグプタ1世がグプタ朝を建国しました。この時代は「インド古典文化の黄金期」と言われ、インド二大叙事詩である『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』が編纂されました。

医学、天文学、数学なども発展し、「ゼロ」が発見されたのもこの頃だと言われています。

インド亜大陸に最初に到達したヨーロッパの国はポルトガルです。1510年にはゴアに拠点を構え、東洋におけるキリスト教の布教と貿易を推進します。

その後複数のヨーロッパの国がインドに進出します。とくにイギリスの東インド会社はインドを支配し、お茶、アヘン、インディゴなどのプランテーションを拡大させて貿易を独占しました。イギリスはインドに対し、経済的にも支配していきます。

インド国内ではイギリスに対する反感が高まっていきます。

1914年に勃発した第一次世界大戦では、インドは食料を始めとする軍事物資や戦費、兵力の供給元となり、財政状態が極度に悪化していきました。

マハトマ・ガンディーは「不服従運動」を展開します。

第二次世界大戦後のイギリスは、戦争に勝利したもののインドを植民地として統治する力は残っておらず、独立を求めることとなります。

インドの初代首相にはジャワハルラール・ネルーが就任します。冷戦時代にはどちらの陣営にも属さない「非同盟運動」を提唱し、インドの近代化に尽力しました。

2000年以降の経済的発展は目覚ましく、インドはブラジルやロシア、中国などとともに「BRICs」と呼ばれる国の一員となりました。

インドの産業・経済

インドでは、ダイヤモンドの原石を輸入し、研磨して宝石となったダイヤモンドを輸出している(加工貿易)ことで収益を上げています。

現在のインド経済を牽引しているのは、ICT(情報通信技術)産業です。

「インドのシリコンバレー」と呼ばれるバンガロールを中心に急成長しました。

その背景には、インドの初代首相ネルー氏が「頭脳立国」を目指したことが挙げられます。

ネルー氏はインド国内にインド工科大学を次々に作り、現在では23校あります。

インド工科大学の出身者に有名な人物が、グーグルのトップ、サンダー・ピチャイです。

インドでITが発達した理由に、カースト制と呼ばれるインドの階級制度があります。

カースト制度では、自分が生まれたときにもった名字で、ある程度職業が決まっています。

しかし、ITは最近できた職業なので、カースト制度に関わらず、誰でもチャレンジできる職業でした。

したがって、貧困から脱出したいと考える人たちが、IT分野での成功を目指して日々勉強しているのです。

インドの自動車産業も注目されています。インドの自動車の販売台数が、世界3位にりました。

インドのモディ政権が「メーク・イン・インディア」を掲げて製造業に振興し、自動車産業をその核として育成に努めてきました。

インドの乗用車販売市場のシェア1位はスズキで、約4割を占めている。

インド政府はスズキと合弁企業(現在のマルチ=スズキ)を設立することで、日本側は技術、インド側は販売についてのノウハウを互いに提供し合い、シェア1位を獲得しました。

インドの政治

インドは、29もの州などが集まった連邦国家です。各州には州政府があり、それぞれ州知事と州の首相がいます。

国会にあたる連邦議会は二院制を採用し、国民の直接選挙によって議員が選ばれる下院と、各州の議会議員を中心に構成される上院からなります。

インドは国家元首が大統領ですが、政治的には形式的な役割に留まり、実際に政治を動かすのは首相です。

現在(二〇二五年)のインドの与党はモディ首相のインド人民党です。インド人民党は北部で根強い人気があります。

モディ首相は経済発展を実現させ、テクノロジーの発展にも尽力してきました。

たとえば銀行口座が持てなかった貧困層でも、スマホの生体認証でビジネスができるようにしたことが評価されています。

インドでは従来から、インド国民会議派とインド人民党の二大政党が勢力を争ってきました。

インド人民党はヒンドゥー教に基づいた国づくりをすべきだと主張している一方で、インド国民会議派は生協分離主義(セキュラリズム)を掲げています。

インドカースト最下層で、かつては不可触民と言われた「ダリト」の人たちを中心とする政党がいくつかあります。

ダリトの解放などを政策に掲げる大衆社会党などが国会に議席を持っています。

執筆者:山本和華子

【参考文献】

串田誠一著『学校では教えてくれない世界の政治』

山中俊之著『教養としての世界の政党』

山岡信幸著『激変する世界の変化を読み解く 教養としての地理』

宮路秀作著『経済は地理から学べ!』 

【本を出版しました】

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