私、筆者が庄司紗矢香さんを知ったのは、学生のときでした。
庄司さんがバッハのシャコンヌを弾いていらっしゃる動画を拝見し、
あまりの迫力に、茫然となるほどでした。
今回ご紹介しますのは、シャコンヌの雰囲気とはまた異なる、
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ 第2番と第9番をご紹介していきます。
改めて、シャコンヌを聴いてからベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを聴くと、
庄司さんの音色の、表現の無限の広さと深さ、そして豊かさを感じます。
ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ 第2番
【第1楽章】
軽やかで可愛らしい旋律から始まります。
細やかな音色の動きが楽しい作品です。
まるで菜の花の上で舞う蝶のような、蝶たちがささやきあっているような演奏です。
庄司さんの奏でるヴァイオリンの弦と弓が、リアルに擦れる絶妙な音まで聴こえてきて、嬉しくなります。
【第3楽章】
伸びやかで朗らかなメロディです。
音の強弱が鮮やかに表現されていて、聴いてきて心地が良いです。
終盤、華やかな盛り上がりをみせます。
ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ 第9番 「クロイツェル」
ベートーヴェンは生涯で10曲のヴァイオリン・ソナタを書きましたが、特にこの「クロイツェル」は規模が大きく、ヴァイオリンの最高傑作であるとされています。
ベートーヴェン以前のヴァイオリンソナタは、あくまでも「ヴァイオリン助奏つきのピアノソナタ」であり、ピアノが主である曲が大半でした。
しかしこの曲は、ヴァイオリンとピアノが対等であることが特徴です。
また「クロイツェル」が書かれた1803年は、ベートーヴェンが最も充実して輝いていた頃の作品です。
【第1楽章】
甘美なヴァイオリンの音色から始まり、その後、ドラマティックな熱情がヴァイオリンとピアノにより相互に奏でられます。
荒れ狂う愛情(たぶん片思い)のほとばしるエネルギーが、まるで岡本太郎の作品のように爆発しているような演奏ですが、しかしそれは端正な音色で表現されます。
【第2楽章】
第1変奏は、うららかな春の穏やかさを表現したような演奏で、第2変奏は、ヴァイオリンの高音が心地よいメロディです。
第3変奏はメランコリックな小雨の情景を表現しているようです。
そして第4変奏は、ヴァイオリンのピチカートとピアノの掛け合いが可愛らしいです。
【第3楽章】
明るくて華やかな作品です。
細やかに動く音色と、伸びやかに奏でられる音色が交差します。
執筆者:山本和華子