検察官ってどんな職業? なぜ日本は他国と異なり「刑事事件の有罪率は99.9%」なのか? それって裁判必要なの?

目次

検察官ってどんな職業?

検察官とは、犯罪の捜査や刑事事件を遂行する国家公務員です。

ある事件が発生したとき、検察官はその事件を捜査し、被疑者の取り調べや証拠品を集めて調べたりします。

そしてその捜査の結果を踏まえて、検察官は被疑者を起訴するかどうか、つまり刑事裁判にかけるかどうかを決定します。

日本では、被疑者を起訴もしくは不起訴を決定できるのは、検察官のみ(公訴提起権)です。

起訴をした場合、被疑者改め被告人が有罪であると裁判所に対して主張して求刑を行うことも、検察官の重要な役割です。

「刑事裁判の有罪率が99.9%」ってどういう意味? 他の国は何%なのか?

「刑事裁判の有罪率が99.9%」とは、検察官が起訴した事件が、裁判を行った上で有罪となる確率が99.9%、ということです。

他の国はどうなのでしょうか。見てみましょう。

アメリカ 約80~90%

イギリス 約80~85%

ドイツ 約80~90%

フランス 約70~80%

なぜ日本では起訴されたらほぼ有罪になるのか?

●検察官が、「勝てる事件」しか起訴しないから

●裁判官の人事が検察・法務省に握られているため、無罪判決を多く出す裁判官は今後の昇進・キャリアに響いてしまうから(だから裁判官は有罪にしがち)

●無罪判決が出ると、裁判官個人の評価が下がり、「検察の失敗」と見なされる風潮がある。その検察官のメンツやキャリアへのダメージが大きい。

なぜ日本では、「無罪=検察の恥」なのか?

理由1、検察が「国家秩序を守る組織」だから

日本の検察は戦前から、社会秩序を維持するための組織として機能してきました。

理由2、検察官の人事や評価制度が「勝率主義」だから

日本の検察官は、法務省のキャリアルートの中で昇進します。

検察は「国家権力の優秀さ」を象徴する組織であるというプライドが強く、間違うこと自体が許されない文化が根付いています。

【法務省のキャリアルートとは?】
内閣
 |
法務省(行政官庁)
 |‐法務大臣(政治任命)
 |‐検察庁(法務省の外局)→形式上、「行政権の一部」に位置付けられている

他の国は「検察=国家秩序を守る組織」ではないの? 検察の役割の国家間比較

日本における検察の役割・・・国家秩序を守る組織(治安維持)

アメリカにおける検察の役割・・・社会正義の代弁者。州ごと、連邦ごとに独立した検察官がいて、「市民の公益」を守る文化が根付いている

ドイツにおける検察の役割・・・法の下の中立な機構。裁判官と同格の司法職。

北欧諸国における検察の役割・・・社会の信頼を担う公的調整者。「再犯を減らす、更生を促す」という目的を重視する

【国家と検察の関係性】

日本・・・国家権力の一部

アメリカ・・・三権分立の独立機関

ドイツ・・・司法独立が保障され、政治権力からの独立が強調されている

北欧諸国・・・社会全体からの信任で成り立っている

捜査の段階で、事件に関わる証拠はどのように管理されるのか

私たち庶民の感覚からすると、「事件に関わる証拠は、被疑者を裁判にかける役割の検察と、被疑者の弁護側に立つ役割の弁護人の両方に開示されるものなんじゃないのか?」と思いますが、

実際は、日本では、捜査段階で得られた証拠は、検察がすべて管理・保有することが定められています。

そして、裁判において検察が「有罪立証に使いたい」と判断したものだけを、開示するのが原則です。

弁護側が「この証拠を見せて欲しい」と請求することはできますが、

検察が「その必要は無い」と判断すれば、開示しなくても良い、と法律で決められています。

実質的に、検察側が主観で「事件のストーリー」を独占的に作れてしまう構造となっています。

なぜ日本では、検察が事件の証拠を独占することが許されているのか?

日本の司法制度は明治時代より、捜査は国家の機関が真実を探るものであり、トップダウン型の職権主義によって担われてきました。

そのため、捜査官(警察・検察)は、「国家の正義の執行者」とみなされ、現在でも「国家こそが真実を握るべきである」という体制が根底にあるのです。

ちなみにアメリカではディスカバリー制度があり、公平な裁判のために、証拠は全面開示が原則です。

またイギリスでもCPIAという制度があり、検察には、被告人に対しすべての関連証拠を開示する義務があるとされています。

日本では、検察の公正さを客観的に審査・調査するような外部機関は存在しないのか?

日本にも、一応、検察を調査する機関は存在します。しかし、実質的な独立性や強制力は弱いとされています。

検察を監督する機関に、検察審査会があります。

検察審査会は、一般市民11人で構成され、検察による不起訴処分が妥当だったかどうかを審査します。

ただ、審査するための資料や証拠は、自由に見ることはできません。

ここで私思ったんですけど、審査会ほど、その道のプロがやるべきではないのか???

なんで一番大事なチェック機能を、素人の庶民ができると思ってるの???

日本の裁判では、検察が起訴した事件の99.9%が有罪判決ならば、裁判所や裁判官は何のために存在しているの?

欧州や米国の検察官は、法を使って社会を改善していく存在としての役割を担っていて、「公共の利益」や「社会的な意義」を見て起訴するかどうかを決めます。

日本の検察官は、法を使って社会を維持するための役割を担っていて、「いかに勝率(有罪率)を高め続けていけるか」を見て起訴するかどうかを決める傾向があるそうです。

海外の法曹界の人々は、日本の法制度や権力構造に対し、どんな風に見ているのか?

国連の人権理事会、拷問禁止委員会、自由権規約委員会などは、何度にもわたって日本政府に対して勧告を繰り返しています。

●弁護人の取り調べ立ち合いを認めるべき(現在、日本では捜査段階で、被疑者に対し、弁護人の立ち合いは認められていません)

●取り調べ全過程の録音・録画を義務化すべき(現在、日本では密室で捜査が行われています)

●長期拘留・代用監獄制度(警察留置場での拘束)を廃止すべき

しかし、前回の人権の記事にも書いた通り、日本政府は国連から勧告が出るたびに「法的拘束力がない」として、一蹴してきました。

滋賀医大生による性暴力事件の被告に対しての無罪判決は、今後の検察の動きにどう影響を与えるか?

ようやくここまで来ました。

私はこれが一番知りたかった。

2022年に起こった滋賀医大生による性暴力事件の被告に対し、大阪高等裁判所は無罪判決を言い渡しました。

日本の刑事裁判の有罪率が99.9%なのに、性暴力事件にだけ、なんで無罪なん???

そんなことって普通あるんか???

こういうことがあると、今後、性暴力事件に対して、検察はぶっちゃけ関わりたくないって思うかもしれないし、

性暴力事件は無罪になる可能性が高いから、できるだけ不起訴にしておこう・・・みたいな風潮になりそうだけど???

って、庶民の私は疑問に思いました。

そういうわけで調べてみました。調べた結果、検察への影響はよくわかりませんでしたが、

確実に、社会への影響はあったようです。

●警察に被害届を出しても無駄と感じるようになる(無力感)

●「性暴力事件は無罪になる」という空気が作られる

執筆者:山本和華子

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