文字と絵画
西洋では、文字の世界と絵画の世界は、まったく別物という考え方があります。
しかし日本では、昔から文字と絵画の世界は繋がっていました。
平安時代、「古今和歌集」が編纂されました。
「古今和歌集」には、漢文で書かれた真名序と、かな文字で書かれた仮名序の、2つの序文があります。
仮名序は紀貫之が書いたと言われていますが、その仮名序は日本人の美意識を初めてはっきりと告げた文と言えます。
仮名序の一文に、「やまとうたは、ひとのこころをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける」というものがあります。
これは、日本の和歌は、人の心を種として生まれ、それがさまざまな言葉となっている、という意味になります。
そのあとに続く仮名序には、人間を超えた、何か不思議な力を持ったものも、歌で感動させていくことができると表現しました。
「古今和歌集」は天皇の命令によって編纂された歌集で、国家的事業でした。
「古今和歌集」は、漢文以外にも「やまとうた」という伝統が日本にもあるんだということを伝えるために編まれた、日本の美学の宣言書なのです。

「反り」という独自のデザイン
日本の建物の軒は反っています。
日本建築では屋根が重要で、屋根が大きくて軒が深いのが特徴です。
お城というのはそもそも軍事建築で、要塞です。そのお城の石垣も、わずかに曲線を描き、反っています。
日本刀は、平安時代になると反りが出てきます。これも日本刀の特色と言えます。
時間の流れの表現
サントリー美術館にある「秋冬花鳥図」という屏風は、秋から冬にかけての季節の移り変わりを表しています。
屏風の右側には紅葉、左側には雪が描かれています。
このように日本美術は、一つの画面の中で、時間が動く表現をします。
否定の美学
鎌倉時代に編纂された和歌集に、「新古今和歌集」があります。
その「新古今和歌集」の中に、藤原定家の和歌が収められています。
「駒とめて袖うちはらふ陰もなし 佐野のわたりの雪の夕暮」
雪が降っていて、誰もいない静かな、寂しい雪の夕暮れを表現しています。
ここで、「陰もなし」というのは、「誰もいない」ということを表現しています。
貴公子が馬に乗って、袖を打ち払う姿を、否定しているのです。
これは、日本の美的表現の特徴の一つ、「否定の美学」と言えます。
執筆者:山本和華子
今回は、本書の1/10くらいしか紹介しませんでした。
本書は、文学、美術、工芸、音楽など、様々な視点から、日本独自の美学について解説されています。
一読の価値、大有りです!



