建築設計は、気候・風土の側面から社会的・文化人類学的な側面まで、幅広く検討されながら作られます。
設計する際には、設計する側が何かしらの意図を持つことが大切であるとされています。
適切な色彩を決定する際には、「記憶に残る光景」を考慮することが重要です。
さて、色彩は、環境や形態、デザインの印象をどのように変化させていくのでしょうか。
環境色彩計画が色の検討・選定の拠り所としてきたことの一つに、「建築物の基調色は自然界の基調色にならう」という考え方があります。
色彩計画とは、色を使って新しい景色を創造するというよりも、色彩計画を実施することにより、どのような見え方をつくり出せるか、という実験的な意味合いが強いです。
自然界の基調色は、季節や時間の推移に影響を受けにくい土や砂、石などが持っていると定義します。
環境色彩計画では図と地の関係性ということに着目し、環境において何が色を持ち、何がその見え方を引き立てているのかということの相対化を試みます。
地の色とは、ただ地味な色にしておけばよい、という単純な話ではありません。
地の色を使うことで周囲が変化しても、その変化に負けない普遍的な見え方を保持することができることが重要とされています。
自然素材は基本的に多孔質なので、水分をはじめとして外部のさまざまな要素を吸収します。
日常生活において天候の変化により起こる小さな変化は、私たちが見慣れてきた明るさの変化の幅でもあります。

色彩計画において、ただ無難な色を選ぶことが大事なわけではありません。
誰かが設計した住宅やオフィス、橋などは、個人の資産であると同時に、環境を構成する要素の一員です。
色彩心理学の観点から、青色というのは世界中で最も嗜好の偏りが少ない(好き、という人が多い)色であるとされています。
風景の色の見え方は距離の変化に応じて遠いほど霞んで見え、近いほど鮮やかに見えます。
一般的に伝統的な日本家屋は、風雨にさらされ、時間の経過とともに彩度が下がります。
汚れない、色褪せないということは確かな価値の一つですが、時間にしか育てることが出来ない景色もあるのです。
パブリック・アートは無彩色化・高明度化が進む都市の中で「ちょうどいい色のボリューム」を与えています。
パブリック・アートは立体的なのでさまざまな角度から見られます。ゆえに、常に多様な表情を見せてくれることが特徴です。
また、パブリック・アートは地域のランドマークにもなります。
執筆者:山本和華子
【参考文献】
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