十分に教育を受けられなくて悔しい思いをしてきた、かつての私へ

はいみなさんこんにちは。

私は、貧困家庭に育ちました。

父はおらず、母は嫡男である兄を溺愛。

家父長制の強い北陸地域に私の実家があるんだけど、

下の子で、しかも跡取りじゃない女として生まれた私は、ずっとほったらかしだった。

もはや、居ない子に近かったと思う。

高校は第一志望の高校に通わせてもらえなくて、

家から近いぼんやりしたパッとしない高校に通っていた。

家にも学校にも居場所なんてなかった。

家にお金も無いし愛も無いし、

すべての人生の可能性をつぶされたようで、

すべてにおいて無気力だった。

当時流行ってた「モバゲー」ってやつでホストと知り合ったりして過ごしていた。

だんだん学校の勉強にもついていけなくなっちゃって、

でも家にひきこもる居場所もなくて、

体育館のトイレにこもって本ばっかり読んでた。

高校の思い出って、体育館のトイレしか記憶にない。

友達もいないし、たまにホストと遊んで

透明な存在として生きてた。

でも本当は、とっても苦しかった。

本当はもっと勉強したかった。

社会が知りたかった。

世の中がどんな風に動いているか、知りたかった。

それで母に「塾に行きたい」って何度か言ったんだけど、

「兄を塾に行かせるので精一杯だから、お前を塾に行かせる余裕は無いよ」の一言だった。

兄は跡継ぎだしな。

本当は、勉強したかった。

クラスのみんなが受験貴族、塾通い貴族だらけの中で、私だけ透明な3年間だった。

ところで、当時、私は画家の山田かまちが好きだった。

今でも好きだけど。

17歳の時に、「山田かまち美術館に行くために、一人で群馬へ旅行させてくれ、かまちと対話させてくれ」と母に言った。

そしたら、なぜか母も群馬旅行についてきた。

心底嫌だった。アートリテラシーや教養リテラシーが皆無の母は、山田かまちの写真を見てバカ笑いをしたり、

なんかホント、うんざりだった。

大切な人を踏みにじった母を、私は未だに許せてない。

いつか、必ず、また山田かまち美術館に行きたい。

かまちに会いたい。



そうこうするうちに、私は体育館立トイレ高校を卒業した。

心の98%は壊死してた。

マジで、壊死。

透明な存在であることに疲れ切っていた。

残りの1%は美術で、もう残りの1%は音楽だった。

私の生きる切り札、それだけ。

ホントにそれだけだった。

今思えば、この世に「芸術」というものが存在しなかったら、

もしくは、私に「芸術」を感じる感性がなかったら、

本当にもう、人生どうなってたかわかんない。

私にとってアートは、生きるための最後の箍だった。


私は勉強したかった。

それで、実家を出て一人暮らしして、

音楽検定3級と、美術検定3級を取得した。

「私、やればできるんだ」って、初めて思った。

どんなに傷ついていたとしても、好き、っていう気持ちを捨てないでよかった、って思った。

私にはアートという居場所があるって、自己承認できた。

シンプルに嬉しかった。

今思えば、あのときが私の人生の本当のスタートだったように思う。



それからは祇園でホステスとして働いて、充実した日々を送っていた。

仲良くなったお客様にクラシックコンサートや高級フレンチ、ワインバーに連れて行っていただいたり、

別のお客様とは古墳巡りしたり、フェルメール展に行ったり、楽しかった。

疑似お父さん、って感じだったし、お客様も「変わった子だね」と、可愛がってくださった。

読書もずっと続けていた。

あのときはアートを、自分が社会的アッパー層に登り詰めるためのツールだと信じてた。

でも今思うと、大切なものをそんな風に利用していたのは、少し悲しいかな。

世の中は平等じゃないから、戦略や生き方は考えなきゃいけないし、

塾通い貴族になれなかった私は、死ぬまで森羅万象を学び続けなきゃいけない。

貴族たちの優雅なアートの享楽とは違う方法で、

ボロ雑巾の私はアートと対峙しているんだろうけど、

全く触れることができない環境よりはありがたいと思う。

そういうわけで私はこの記事を、

十分に教育を受けられなくて悔しい思いをしてきた同志に届けたいと思う。

どんな境遇に育っても、

どんなに傷ついて育っても、

自分の思う「これが好き」っていう気持ちは絶対に手放さないでほしいし、

諦めないでほしい。

そして、どんな形でも、学び続けることで自分を助けてあげられることを、知ってほしい。

執筆者:山本和華子

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