ピアニスト、實川風『プレイズ・ショパン』 ~極上のクラシック音楽を聴いてみたシリーズ~

實川さんといえば、まさに貴公子ショパンのイメージ。

私が實川さんの演奏を初めて聴いたのは、大学生のとき。

ラヴェル作曲の「クープランの墓」を聴いて、「なんてイケメンなんだろう」と思い、

もうもうもう、それだけで虜でした(笑)

今日は、ピアニストである實川風(かおる)さんの作品、

『プレイズ・ショパン』の感想を書いていこうと思います。

目次

前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28-15 「雨だれ」

優しさに包まれながらも、少し物哀しさも感じられる演奏です。

中盤、クレッシェンドで大きな雨音が打たれるときの、不安におそわれる情景がリアルです。

そして第一主題に戻り、安心感漂う優しい雨音に変化します。

スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31

激情の和音から始まり、艶やかで力強いメロディに移っていきます。

そしてその後、情景が一変します。

憂いの帯びた静寂のメロディと、ドラマチックでいて華やかなメロディとが交互に彩られていきます。

私は元々ショパンに対しては、

ノクターンなどの「穏やかな気品のショパン」という一面しか知らなかったのですが、

この作品は、まるでゴッホの渦の筆致のような、

生命の奥底から吹きあがってくるマグマのような凄まじさが押し寄せてきて、

新しい発見をすることとなりました。

ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」

實川さんの、極上の甘い音色に包み込まれる一曲です。

大人の上品でビタースウィートなショコラケーキをひと口、

思わずため息をついてしまうような演奏。

少しの憂いを帯びた和音と、終始滑らかな口どけのメロディ。

まるで恋の甘さのようなトリルの魅惑。

練習曲 第13番 変イ長調 作品25-1 「エオリアンハープ」

芳醇な美しさがパッと華やぐ作品です。

分散和音が、ふんわりキラキラきらめくいわさきちひろさんの絵のような情景を彷彿とさせます。

アンダンテ・スピアナート

気品あふれる上品な作品。

静謐な午後の紳士、という印象を持ちます。

ピアノの細微な音色を存分に慈しむことができます。

ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 「英雄」

大★本★命「英雄」きました!

もう両手いっぱい広げたサモトラケのニケのような、気品と華麗さ溢れるまばゆい演奏です。

優雅な華やかさは、まるでアルフォンス・ミュシャの絵画のよう。

黄金絢爛かつ大胆聡明な實川さんの演奏は、まさに「英雄」そのものです。

執筆者:山本和華子

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