色彩の世界史 ~壁画や化粧品、顔料や染織の歴史~

【オーカー】

現存する人類最古の美術作品は、オーカーを使って描かれました。

オーカーが使われた痕跡は、古いもので25万年前までさかのぼります。

オーカーで描かれた太古の絵は、インド、ヨーロッパ、オーストラリアなど、世界中で見つかっています。

フランスのラスコー壁画も、オーカーで描かれています。

鉄分を含む天然のオーカーは土から採れ、黄色から赤、褐色まで幅広い色があります。

【ランプブラック(油煙)】

ランプブラック(油煙)は青がかった黒色の顔料で、4000年以上前から古代エジプト人たちによって墓所の装飾や壁画に使われてきました。

油煙は、ろうそくや樹脂、油などを燃やすランプの煤(すす)を集めて作ります。

中国では古くから、この油煙とニカワを使って墨を作ってきました。

【エジプシャンブルー】

古代エジプトでは、陶器の釉薬をつくる工程を発展させ、

石灰、銅、シリカ、ナトロンを加熱することで、この顔料が生み出されました。

この顔料が発明されてから、エジプシャンブルーは壁画や彫刻、石棺などの彩色にふんだんに使われました。

またこの色は、エジプトからメソポタミア、ギリシャ、ローマにまで広く伝えられました。

【オーピメント(石黄、雄黄)】

オーピメントのラテン語には、「黄金の絵具」という意味があります。

古代、オーピメントには、錬金術的な意味があると考えられてきました。

オーピメントは、きわめて毒性の強いヒ素の硫化物です。

しかし、毒性が強いにも関わらず、古代エジプトでは化粧品として使われていました。

【レドホワイト(鉛白、胡粉色)】

この色は、過去2000年にわたって製造され続けてきました。

長年、この色は画家たちにとって最も重要な色でした。

ただし、レドホワイトは毒性が強く、レドホワイトの加工場で働く人々は鉛中毒に苦しみました。

【ティリアンパープル(貝紫)】

この色の原料は、古代フェニキアの古都ティルスで採れる巻き貝です。

ちなみに「フェニキア」とは、「紫の国」を意味します。

1個の巻き貝から採れる染料は、たった1滴です。1オンス(約30グラム)の染料を得るために、25万個ほどの貝が犠牲になりました。

貝紫を使えるのは、上流階級だけでした。ローマ帝国では、皇帝以外は「真の紫」の着用は禁じられていました。

【インディゴ】

インディゴは、はるか昔からテキスタイルの染織や壁画の彩色に使われていました。

インディゴが栽培され始めたのは5千年以上昔のインダス峡谷です。

日本で用いられるタデ藍や琉球藍などもインディゴに含まれます。

【マラカイト(孔雀石)】

マラカイトは、鉱山で採掘される美しいエメラルドグリーンの鉱物です。

古代エジプトでは化粧品の他、棺の装飾にも使われました。

19世紀まで、緑色を表現できる顔料がきわめて少なかったため、

マラカイトはヨーロッパと東アジアで何世紀にもわたって使われました。

投稿者:山本和華子

参考文献 『クロマトピア』デヴィッド・コールズ著

※色彩の画像の表示は、「カラーサイト.com」さまに記載のRGB値をもとに作成しています。

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