イスラム建築の歴史と特徴

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ドームとイーワーン

ドームは、西アジアの乾燥地帯に始まり、古代から引き継がれた技法です。

特に紀元後のペルシャ人たちはドームを好んで使っていました。

長大な部材を得ることの難しい乾燥地帯では、何とかして大きな空間を覆うために土や石を部品として積み重ね、ドームやアーチが生まれました。

そして、乾燥地帯に覇権を広げたイスラム教徒たちはその技法を継承しました。

イスラム建築の歴史を紐解けば、ドームをのせる方法は、イスラム建築の美と技術の探求への第一の命題でした。

ササン朝ペルシャのもつ建築伝統の一つに、「イーワーン」というものがあります。

イーワーンとは、一方が完全に開き、三方が壁に囲まれて、天井がアーチ状となっている空間のことです。

中東においては中庭建築が好まれ、中庭と部屋との間に、日本建築でいうところの「縁側」のような軒下空間に似た中間的空間が発達します。

その空間を広間としたのがイーワーンです。

柱の無い大広間としてのイーワーンの誕生は、紀元前後のオリエント世界にさかのぼります。

そして、12世紀のペルシャ世界で、古代ペルシャの要素であったイーワーンが復活し、大ドームとセットになり、モスク建築に取り入れられました。

イーワーンは13世紀にはエジプト、アナトリア(小アジア)からインドまで広がり、ペルシャ風の建築の流行を引き起こしました。

イーワーンは中世イスラム建築の広い地域に共通する、大きな特色となりました。

イスラム世界ではドーム、そして裾野の広い曲面架構界ではドーム、そして裾野の広い曲面架構が好まれました。

半球形の大ドームの内側は、手の込んだ装飾で飾られます。

イスラムの宗教建築においてドームは、高貴なものの象徴でした。

高貴なものの象徴としてのドームは、蒼穹、神の玉座、あるいは天国を意味していたことが考えられます。

ミナレット

エジプトのオベリスク(石の記念柱)あるいは南アジアの仏教ストゥーパやヒンドゥー寺院の̪シカラ、ゴシック教会の鐘楼、そして日本の五重塔のように、宗教建築は塔を好んで用いてきました。

塔は天空へと達する造形で、宗教建築の象徴となっていきました。

イスラム世界には、モスクに付属するミナレット、墓塔、城砦建築のボルジュなどがあります。

ミナレットは階段が取り付けられた、登るための塔です。

またミナレットは、モスクへと人々を誘うために、そこから日々のお祈りの時間を告げるアザーンが唱えられる場所です。

ミフラーブ

今日まで、世界中のイスラム教徒は、メッカのカーバ神殿(サウジアラビアにある建造物で、イスラムにおける最高の聖地とみなされている聖殿)に向かって1日5回の礼拝を行っています。

そのときにメッカの方角を指し示す装置がミフラーブです。

初期のミフラーブには、上部を帆立貝の殻のように装飾した例がよく見られます。

中心から放射状に伸びる光背のような形態は、エジプトのコプト教会のモチーフにも見られます。

また、アーチの放射状の構成を強調する例は、地中海に多いです。

ミフラーブの歴史をたどれば、ミフラーブは方向を示すだけでなく、儀式との関連、カリフ権の象徴、建築の見せ場として用いられてきました。

ミフラーブの装飾は、レンガ、タイル、石、漆喰など、さまざまな材料で意匠をこらしたものが各地でつくられました。

執筆者:山本和華子

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