イスラム美術の特徴 ~写本芸術、アラビア書道、陶器、ガラス工芸、アラベスク文様など~

目次

写本芸術

イスラムの写本芸術

写本とは、あるテキストを手書きで写した書物のことです。

8世紀に中国から製紙法が伝わると、紙の写本が普及しました。

イスラムの聖典クルアーン(コーラン)や、挿絵、叙事詩、科学書などが写本として繰り返し書き写されました。

イスラム地域では、書家は最も高い地位を持つ芸術家でした。

なぜならば、神の言葉クルアーンを書き写すことがその最大の使命だったからです。

イスラムのアラビア書道(カリグラフィー)

イスラム写本の装丁素材の豪華さや細工の緻密さ、デザインの美しさは注目に値します。

とくにオスマントルコでは、スルタン(王)のために宝石を散りばめた金細工や刺繍された鮫皮(さめがわ)、べっ甲細工など、贅沢な素材と技法が装丁に用いられました。

イスラム美術によく見られる文様全般を、「アラビア風」という意味を込めて「アラベスク」と呼んでいましたが、後に蔓草の連続植物文様だけをとくに「アラベスク」と呼ぶようになりました。

工芸品

イスラム美術がほかの地域の美術史とは大きく異なる点の一つに、工芸品が大きな位置を占めていることが挙げられます。

イスラム地域の大部分は東西交易の中間点に位置していたこと、さまざまな特殊技術が開発されていたこと、各々の王朝が工芸品の制作を奨励していたことが、イスラム圏で工芸品が発展した理由です。

12世紀頃、胎土(陶磁器を制作する際に使用する土)の革命が起こりました。

細かな石英に粘土と釉薬の粉を混ぜてストーンペイストを作ることに成功しました。

ストーンペイストの発明により、白くて薄い陶器がつくられるようになりました。

イスラム地域では、ラスター彩という陶器が焼かれました。

ウズベキスタンの陶器

ラスター彩とは、彩画部分が金属のような輝きを示す陶器のことです。

ラスター彩は、イスラム地域独自の陶器技法です。

またイスラム地域では、ミーナーイー陶器も作られました。

ミーナーイー陶器とは釉上彩(陶器に釉薬をかけて、その上にエナメルで装飾を描く技法)のことです。

ちなみに「ミーナーイー」とは、エナメルのペルシャ語です。

イラン中部にある街カーシャーンは、12世紀末からラスター彩陶器とミーナーイー陶器を制作するようになり、ペルシャ陶器の一大中心地として黄金時代を築きました。

モロッカンランプ

またイスラム地域は中世、ガラス器生産の世界的な中心地でもあり、薬瓶や水差し、ランプなどが作られました。

マムルーク朝の有力者は競って宗教施設を建設しましたが、その内部を照らすランプも同時に大量に制作させました。

そのランプには、幾何学文様、植物文様、文字文様が施されました。

イスラムの美とは

イスラム教は、中央アジアからマグリブという乾燥地域で興りました。

乾燥地域では、砂漠や外敵から身を守るために、人々は建物の内側に集まりました。

したがって、アラベスク文様などのイスラム美術は、主に建物の内部の装飾において発展していきました。

イスラム建築のミフラーブ

イスラム教では、神の前にみな平等であるという世界観があります。

また、神の思召した運命に従って生きるべきであるという人生観があります。

イスラム教では偶像崇拝が禁止されているため、神の無限性や永遠性を表現するために、アラベスク文様が多用されます。

アラベスク文様は、絡み合うつる草や植物の成長をモチーフとしており、生命力や繁栄の象徴としても解釈されています。

執筆者:山本和華子

写真提供:写真ac https://www.photo-ac.com

イラストは、生成AIにより作成しました。

【本を出版しました】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次