西アジア(中東)の美術、音楽、建築、民族衣装、民族舞踊、料理、文化生活

西アジアは古代メソポタミア文明の発祥地として知られ、ユダヤ教、キリスト教、イスラームの聖地があります。

なかでもイスラームはこの地域で大きな勢力を持ち、人々の日々の暮らしはイスラームの教えや戒律に従って営まれています。

乾燥気候が広がり、人々は砂漠や半砂漠の環境の中で生活を営んできました。

人々は伝統的にオアシスでの灌漑農業や遊牧を生業としてきました。

ヨーロッパ、アジア、アフリカを結ぶ位置にあたり、歴史的に東西交易路の要衝です。

古代からバビロニア、ペルシャ、オスマントルコといった大帝国の興亡が見られた地域です。

オスマン帝国が19世紀後半から衰退していくのに伴って、この地域はヨーロッパ列強による覇権争いの舞台となりました。

目次

美術

建築・世界遺産

メソポタミアからイラン高原にかけて見られる住居は、日干煉瓦による中庭式住居です。

クルド族の定住民は、日干煉瓦で陸屋根の中庭式住居に住んでいます。

アラビア半島の内陸部は焼成煉瓦造で、熱暑に対応するための厚い壁、小さな開口が特徴です。

イエメン西部の山岳地帯ジャバルには、多層の塔状住居が見られます。

古くからの首都サナアの住居は、7~8層の高層住居で、石造、焼成煉瓦造です。

サナアの旧市街(イエメン)

イエメンの首都で、文化の中心地となっているサナアは、中世アラビア都市の面影を色濃く残しています。

世界最古の都市のひとつとされているサナアは、紀元前10世紀頃にはすでに乳香(香料の一つ)交易によって繁栄していました。

この旧市街を最も特徴づけているのは住宅です。鉄筋などは一切使われず、花崗岩や玄武岩でできた土台に、「アドベ」と呼ばれる日干煉瓦を積み上げて作られています。

タフテ・ソレイマーン(イラン)

ゾロアスター教の聖地であるタフテ・ソレイマーンは、紀元前6~紀元前4世紀のアケメネス朝時代から聖域として崇められています。

タフテ・ソレイマーンは、イスラム建築に大きな影響を与えました。

ヒッタイトの首都ハットゥシャ(トルコ)

ハットゥシャの遺跡は、アナトリア(小アジア)に君臨したヒッタイト王国の首都遺跡です。

この地を拠点とした騎馬民族のヒッタイト人は、優れた製鉄技術を持っていました。

音楽

1、古代オリエント世界の音楽

●メソポタミア

ウル出土のリラ(弦楽器)には、豪華な装飾が施されています。

象嵌細工で動物が奏楽するさまが精緻に描かれています。楽器は、祭祀の重要な道具でした。

西アジアの楽器は古バビロニア時代に大きく変化し、新たに鋭角ハープが現れました。

これは、垂直に構えて指で奏でられる竪琴です。

また、細長い棹をもつリュート(タンブール)はアッカド時代に現れています。


●ペルシャ(古代イラン)

アケメネス朝ペルシャの人々は、ゾロアスターの教義を信じました。

アケメネス朝ペルシャはその後、アレクサンドロス大王によって滅亡しました。

その結果、オリエント文化にギリシャ文化が融合したヘレニズム文化が誕生します。

この頃から、シュリンクス(パンパイプス)や小型のリラなど、ギリシャ起源の楽器が西アジアに見られるようになります。

ササン朝第15代のバハラーム五世は、音楽家のために廷臣の位を特設しました。

この時期、マカームという旋法の前身である7つの旋法を基礎にしていきました。

2、イスラーム前期

イスラームの音楽文化は、歴代のカリフたちの宮廷生活の中で展開しました。

西アジアの音楽理論の根幹をなすのが、マカーム(旋法)とイーカーア(リズム周期)の概念です。

マカームに基づいたアラブ=ペルシャ様式の音楽をトルコ風に発展させたものがオスマン・トルコの伝統音楽です。

オスマン音楽の一つにメヴレヴィー教団の典礼音楽があります。

メヴレヴィー教団は音楽と舞踊がその典礼の中核を成します。

メヴレヴィー教団はその神秘的合一体験に至る最も有効な手段として、マカーム音楽を採用しました。

祝祭

ジェラシュフェスティバル ヨルダン、7月

ヨルダン北部、古代ローマ時代の遺跡が残るジェラシュで行われる芸術祭です。

ヨルダンの伝統音楽や舞踊のほか、他諸国の音楽、踊り、演劇、オペラが繰り広げられます。

民族舞踊

メヴレヴィー旋舞(トルコ)

メヴレヴィー旋舞は、イスラム神秘主義(スーフィー)のメヴレヴィー教団が詩人の「メヴラーナ」の名をとって13世紀に設立されました。

旋回舞踊は、ネイの笛の響きに導かれて、陶酔していくうちにアラー神との合一を果たすことを目的としています。

民族衣装

マクナエ(イラン)

ゾロアスター教の礼儀用ヴェールをマクナエと言います。

花嫁が被るものとされています。

マクナエの中央の円文は、ゾロアスター教の光の神を表すとされ、その周りには山羊や孔雀、種々の花が刺繍されています。

料理

フェンセンジャン(イラン)

ザクロとくるみと鶏肉を煮込んだ古典料理です。

ザクロは、中東ではポピュラーな食材です。

伝統的にはアヒルの肉を使っていました。

クク(イラン)

卵を使い、ズッキーニを上にのせたオムレツのようなものです。

16世紀の料理本にも載っています。

ラフマジュン(トルコ、レバント地方)

ピリ辛のうす焼きピザ

エスフィーハと呼ばれることもあります。

トッピングにラム肉を使います。

執筆者:山本和華子

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【参考文献】

井田仁康著『読むだけで世界地図が頭に入る本』

布野修司著『アジア都市建築史』

マイナビ出版『くわしく学ぶ世界遺産300』

学研プラス『世界の祝祭』

文化学園服飾博物館『世界の民族衣装図鑑』

青木ゆり子著『世界の郷土料理事典』

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