呪術としての色彩
古代、ネアンデルタール人やホモ・サピエンスは、他の同時代の祖先と異なって、埋葬の習わしがあったと言われています。
生命の証である血の色(つまり赤色)を、墓碑や遺骸に塗ることによって、生命の再生を願望したと考えられています。
オーストラリアの先住民であるアボリジニは、葬送の際、女性たちは身体を白か黒に彩色する習慣がありました。
パプアニューギニアは葬送で、女性が粘土で身体に彩色する習慣がありました。
葬送者は使者の霊魂である白を身体に塗ることにより、死者との同化を図ったのではないかと考えられています。
また、白は生者が悪霊から身を守る呪術的な意味を持つとも考えられています。
日常生活の中でも生者は身体彩色を行いました。
身体彩色の意味は、各部族間の識別、儀式への参加証明、戦闘への鼓舞、祝祭・舞踏など、様々なケースが考えられています。
洞窟美術
旧石器時代になると、原始狩猟採取民によって、洞窟美術が発達しました。
ブラジルのセラ・ダ・カピバラ国立公園の岩絵、フランスのショーヴェ、ラスコー、スペインのアルタミラの洞窟画などがあります。
これらは古代の人たちが、「人が自らを彩色する」ことから、「人がものに彩色する」行為へと移行し始めたことを物語っています。
古代エジプトの色彩
ナイル川は、エジプト人にとって生命線であり、神に近い存在でした。
エジプト人の死生観で最も重要な理念は「再生」です。
古代エジプトの遺跡に残る壁画では、男性のシェンティ(腰布)や女性のチュニックは、いずれも白粘土で塗彩されています。
亜麻製の白い衣服以外では聖域に入ることは禁じられていました。
古代エジプト人にとって太陽は、世界秩序の主であり、太陽神ラーは人々の畏敬の対象として人々の信仰と崇拝を集めました。
日常生活において、古代エジプト人は緑色(シナイ半島で採れる孔雀石の色)のアイシャドウをしていました。
エジプト人は緑色には薬効があると信じていました。
マヤ文明の色彩宇宙
マヤでは、あらゆるものに神を見出す汎神論的な世界観を持ちます。
緑の鳥であるケツァールは、太陽神の化身であり、聖鳥です。
マヤ人にとって緑は宇宙の中心の色でした。
マヤ文明を象徴するマヤブルーは、鉱物顔料の色で、神殿の壁面や神像を彩っています。
執筆者:山本和華子
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