インドの神話
インドには、神話や哲学、宗教がゆたかに残されています。
しかし、インドには系統だった歴史書はほとんどありません。
インドの人々は古来より、現実世界より神々の世界や死後の世界に興味を抱いてきたことがわかります。
インドの神話は、バラモン教の神話(ヴェーダの神話)と、ヒンドゥー教の神話に大きく分かれます。
<バラモン教の神話>
インド最古の宗教文献を「リグ・ヴェーダ」といい、紀元前1200年頃に成立しました。
「リグ・ヴェーダ」は、神々への讃歌(賛美する気持ちを表す歌)を集めたもので、まとまった形で神話が提示されてはいません。
「ブラーフマナ」と呼ばれる文献は祭式の説明書で、成立時代は紀元前1000年~500年頃です。
「ブラーフマナ」に、洪水神話が記されています。
その洪水の話は、メソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」にもあります。
オリエントからインド、ギリシャの洪水神話は、すべて起源が同じです。
また、メソポタミアから「旧約聖書」に影響が及び、「ノアの方舟」になりました。
同じくメソポタミアからギリシャに伝わって、「デウカリオンの洪水」になりました。
<ヒンドゥー教の神話>
紀元前6世紀から4世紀頃に、ヴェーダを絶対の聖典とするバラモン教が、
土着の民間信仰などを吸収して大きく変ぼうを遂げた宗教を、ヒンドゥー教と言います。
ヒンドゥー教には、「マヌ法典」「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」など膨大な量の聖典があります。
ヒンドゥー教ではヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーの三神が主神となり、
インドラを始めとしたヴェーダの神々の地位は相対的に低くなりました。
後代になると、最高原理ブラフマーが世界を創造し、ヴィシュヌが世界を維持し、シヴァが世界を破壊するという、
三神一体の説が述べられるようになりました。
ヒンドゥー教の世界観には、ユガという非常にスケールの大きい時代区分があります。
ユガは終わりと始まりをぐるぐると円を描くように繰り返す、円環的な世界観です。
メソポタミアの神話
紀元前3000年、シュメール人が神話を残しました。
紀元前2000年代から、アッカド語を話すセム族が、メソポタミア南部にバビロニアを、
北部にアッシリアを築きました。
バビロニアに伝わる神話に、「エヌマ=エリシュ」があります。
「エヌマ=エリシュ」は、バビロニアの創世神話です。
「イナンナの冥界降(くだ)り」は、イナンナという豊穣の女神が死者の世界に降っていくという神話です。
イナンナの冥界降りは、植物の神の「死と再生」のサイクルの神話ですが、
オリエントからギリシャを中心に広く分布しています。
「ギルガメシュ叙事詩」は、世界最古の叙事詩(英雄の功績などをうたいあげた詩)です。
ギルガメシュ叙事詩の最後に、蛇が出てきます。
これは、蛇の脱皮と関係があるのですが、これとたいへんよく似た話が、沖縄の宮古島にあります。
蛇の脱皮という現象が、人間にとっていかに印象的だったかがわかります。
北欧の神話
北欧のゲルマン人の神話の特徴は、「神々と世界の終末」がはっきりと語られていることです。
北欧神話の代表的なものに「古エッダ」と「スノリのエッダ」の二つがあります。
「古エッダ」は10世紀末に編纂されました。
「スノリのエッダ」は、13世紀にスノリ・ストルルソンという人物によって記されました。
北欧神話の世界観の中心には、1本の巨木があります。
その巨木をユグドラシルと言います。
世界そのものであるこの巨大な樹は、常に危機的な状況にあります。
これは、北欧の神話世界において、世界が常に危機にさらされているという思考の現れだと考えられています。
そして世界は、やがて終わりを迎えます。その終わりを「ラグナロク」と言います。
」最終戦争ラグナロクは、バルドルという神の死によって特徴づけられます。
しかしバルドルは、死んで蘇って世界の支配者となります。
これは、破壊と再生を繰り返す円環的な世界観のもとに語られていることを示唆していると考えられています。
執筆者:山本和華子
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