みなさんこんにちは。今日は、王維という唐代の詩人の詩を楽しんでみましょう。
王維は、李白や杜甫と共に、唐を代表する詩人の一人です。
彼は官位も高くまで昇りましたが、官僚としてよりも、詩、絵画、音楽、さまざまな分野の芸術において一世を風靡した、才能豊かな人だったそうです。
時代の寵児といってもいい華やかさに包まれた人でしたが、彼自身はもともと自然のなかの静かな暮らしを好みました。
俗界を離れた、浄化された世界を描いた王維の詩は、日本でもとりわけ愛好されました。
私は王維の詩を書き下し文で読んだとき、ヨーロッパの印象派のような色鮮やかさを彷彿としました。
ぜひキラキラとした言葉の美しさを、感じ取ってみてください。
竹里館 原文
獨坐幽篁裏
弾琴復長嘯
深林人不知
明月來相照
竹里館(ちくりかん) 書き下し文
独り座す 幽篁(ゆうこう)の裏(うち)
琴(きん)を弾(だん)じ復(ま)た長嘯(ちょうしょう)す
深林(しんりん) 人知らず
明月 来たりて相(あ)い照らす
竹里館 翻訳
ひとり、やや暗い竹篁(たかむら)の中に座る。
琴をつま弾き、声長くうたう。
深い林のなかは知る人もいない。
月が昇ってきて、わたしを照らす。
「竹」といえば、3世紀の魏の時代の哲学者たちが、月夜の下、竹林にて酒を酌み交わしながら議論に耽った「竹林の七賢」が思い浮かびますね。
この詩の中の「琴」と「嘯」には、隠逸者の暗喩があります。
したがって「竹里館」の人物は、竹に囲まれた館のなかで、隠者らしく、琴をつま弾いたりうたったりしているのでしょう。
執筆者:山本和華子
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